イノシシ
イノシシ Sus scrofa(偶蹄目イノシシ科)
形 態 |
※体高は60~80cm、藪や茂みに隠れやすい。 偶蹄目イノシシ科に属する大型の哺乳類である。 体のサイズは地域によって異なるが、中国山地産ニホンイノシシの雄成体では体重50~150kg、頭胴長110~160cm、体高60~80cm、西表島産リュウキュウイノシシの雄成体では体重40~50kg、頭胴長80~110cmである。雌の体のサイズは雄よりも小さく、体重にして雄の20~40%軽い。 |
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分 布 |
※分布北上中。 北アフリカの一部からユーラシアに広く分布する。 日本では、ニホンイノシシが本州、四国、九州、淡路島に、リュウキュウイノシシが奄美大島、徳之島、沖縄島、石垣島、西表島に分布する。雪に弱く、1冬当たり30cm以上積雪日数が70日を超える東北、北陸地方などには分布していないとされている。近年では福島の山間部など雪の多い地域においても生息が確認され始めており、右の分布図に示すとおり、近年その分布が徐々に北へ広がっている。 |
生息環境 |
※広葉樹林、竹林、耕作放棄地が主な住みか。 常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、里山の二次林、低山帯と隣接する水田、農耕地、平野部に広く分布する。 |
食性 |
※タケノコ、ドングリ(堅果類)、植物の根や茎、昆虫、両生類、爬虫類などを食べる雑食性。 雑食性で、地表から地中にかけての各種の植物と動物を掘り返して食べるのが特徴である。植物ではクズ、ヤマノイモ、ススキの根茎や各種の葉、果実、堅果など、動物では昆虫類、ミミズ、タニシ、カエル、ヘビなどを食べる。耕作放棄地のクズの根茎も好物。 |
繁殖 |
年間平均4.5頭出産し、その半数が成獣になる。シカやサルに比べ増えやすい(捕獲のみの対策では被害を減らしにくい)。 初産齢は1~2歳。毎年出産をする。年間2~7頭(平均4.5頭)を出産し、半分程度生きるとされる。出産期は春~秋で、通常1年に1回出産だが、春と秋の年2回出産することもある。 |
行動特性 |
※人の活動場所では夜明けや夕方の薄暗い時間や、夜間に行動する。危険がないと分かると日中でも活動するようになる。 ※成獣は1m以上の跳躍力を持ち、通常は防護柵などの障害物に対しては警戒しながら近づき、安全を確認する。一方、上を越えるよりも下をくぐって通り抜けようとする。 幼獣は15cmの格子を潜り抜け、成獣も高さ20cm程度の隙間を潜り抜けられる。鼻を使って土を掘り返し、ミミズや植物の根を食べる。鼻で50~60kgのものを持ちあげられる。 |
社会性 |
※基本的な社会単位は、子供を連れた成獣雌の母系的グループ、単独成獣雄、生殖に参加しない若齢雄グループの3つ。成獣について言えば、雌雄ともに単独性の社会を形成している。 娘は母親とともに母系的な群れを作るが、雄は1~2歳で母親のもとを離れ、小さな群れを作るか、単独生活を行う。 一夫多妻制の社会であり、雄は交尾期にのみ雌の群れに入る。 通常なわばりは持たず、複数の群れが同一地域を利用することも可能。しかし、成獣雌同士の闘争や、成獣雌が他の群れの子供を襲う行動も認められている。 |
参考文献
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阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎悟・米田政明(2005)日本の哺乳類[改訂版] .
東海大学出版会. - 特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(イノシシ編)(2010)環境省
- 野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ、シカ、サル―実践編―(2007)農林水産省
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○農作物被害(根菜類、稲、作物の根など)
- 山に餌のなくなる夏季に水田に侵入し、イネを食べるほか、野菜、イモ類、マメ類、ムギ類などを食害する。
- ミカン、カキ、ブドウ、モモなどの果樹は地面に落ちた果実のみでなく、枝を折り食害することがある。
- その他、耕作放棄地のクズの根茎、竹林のタケノコも好む。
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○農地、土壌、庭などの踏み荒らし、掘り起こし
- 直接農作物を食害する以外にも、ミミズ、昆虫の幼虫などの土壌動物をねらい、畦、茶畑、芝地など地面などを掘り返す。
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○ゴミ捨て場の食い荒らし
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○餌場や隠れ家をなくす
- 廃棄する農作物を野外に放置しない※
- 生活ゴミ(生ゴミ)を食べられないようネットなどで防ぐ、ゴミを出す時間を守る※
- 餌付けは絶対しない※
- 家の周りや農地の周りの薮の草刈りを行い、隠れ場所を減らす※
- 番犬を飼う※
- ※地域ぐるみで実施することで絶大な効果を発揮します。
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○捕獲する
- 「わな」により捕獲する。
- ★イノシシ被害に関するブログはコチラ⇒
- イノシシなどの大型獣の「わな」による捕獲は、1軒だけで行っても効果は期待できません。地域ぐるみで行うことではじめて個体数と被害を減らすことができます。
- 「わな」による捕獲は、鳥獣保護法、狩猟法などを遵守して適切に行う必要があります。これらの法律は、県又は各市町村が管轄していますので、被害が出て「わな」で防除する場合は必ず自治体の担当窓口に相談しましょう。