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ブラックバス(オオクチバス)による水域への被害

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」の井上です。

今日の鳥獣害対策の知恵袋は、外来魚であるオオクチバスブラックバス(オオクチバス)による水域への被害についてです。

ブラックバス(オオクチバス)は、1925年に神奈川県芦ノ湖に導入されたのがはじめで、現在では一部の水域を除き、密放流により日本全国に分布を拡大しています。

(桐生 1991、丸山 2002:図1参照)

オオクチバスが生息する都道府県の推移

ブラックバス(オオクチバス)は肉食性が強く、魚類のみならず、様々な水生昆虫を捕食するほか、水辺を飛翔するトンボ類の成虫なども捕食することが知られています。

ブラックバス(オオクチバス)の被食者に対する選択性には諸説があり、ヨシノボリ類やエビ類等の“少し泳いでは止まる”というような 動きをする水生生物がまずはじめに捕食されるようです。

次に、その他の魚類を捕食し、これらの水生生物が尽きてくると、ヤゴをはじめとした水生昆虫類が
捕食されるといわれています。

さらに、餌資源が乏しくなると、ブラックバスの稚幼魚が捕食される傾向があるようです。

オオクチバスと聞くと、

  • 琵琶湖(滋賀県)
  • 霞ケ浦(茨城県)
  • 伊豆沼(宮城県)

といった大きな湖にいるイメージがあります。

しかし、実は全国的な密放流が横行しており、現在ではダム湖やため池、さらには5haにも満たない都市公園の池にまで放され、繁殖しているのが現状です。

そして、小さな池などは生物資源量が限られているために、ブラックバス(オオクチバス)が導入された場合は、早期に水域生態系へ影響が及ぶと考えられます。

実際に、以下のような実験データもあります。

この実験は、隔離された空間におけるデータであるために、自然環境に直接的に反映されるものではありませんが、データをみる限りでは自然環境においても相当の影響が大きいと推察されます。

河川における外来種対策に向けて(案)

※細谷ほか(2000,2001)の資料を基に(財)リバーフロント整備センター(2001)がまとめた:「河川における外来種対策に向けて(案)」を引用

このような被害状況に対して、内水面漁業関係者や国、自治体等の様々な主体が駆除の実施を始めています。

具体的には、ため池などの水抜きが可能な水域では、かい掘りによる除去作業が行われています。

しかし、“混獲(※1)”による在来種への影響が懸念されたり、かい掘りを1回実施しても、すべての外来魚(個体)が取り除けるとは限らず、また実施には多大な労力とコストが必要となることも念頭に置かなければなりません。

このような状況の中、明るいニュースとして、北海道でブラックバスの生息が確認されていた3カ所の水域において駆除が完了したとし、2007年5月28日にはブラックバス一掃が宣言されました。

この駆除には、電気ショッカーボート(※2)といった新たな駆除技術も導入されています。

この画期的な方法については、また改めてご報告したいと思います。

現状において、外来魚が侵入してしまった水域については、地域の生態系を保全するために、駆除を実施する必要性があります。

駆除方法としては、上述のかい堀りの他、投網や刺網、定置網による捕獲などが一般的に行われています。

しかし、一番大切な事は、ブラックバス(オオクチバス)をはじめとして、ブルーギル等の外来魚が
導入されていない場所では、未然にこれらの外来魚の導入を阻止する方策を立てることが、最も重要なポイントになるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

井上 剛

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