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【熊被害2023】秋に増加するクマの被害に備えよう(主要都道府県クマ出没情報リンクあり)

【熊被害2023】秋に増加するクマの被害に備えよう(主要都道府県クマ出没情報リンクあり)

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【最終更新日:2023/9/4】

こんにちは「鳥獣被害対策ドットコム」です。今日の鳥獣害対策の知恵袋は秋に起こりやすい熊被害についてです。

9月になりました。まだまだ残暑は厳しいですが、朝晩の涼しさに、秋の訪れを感じられるようになりました。

秋と言えば、「食欲の秋」と言う人も多いかもしれません。しかし、「食欲の秋」は何も人間だけに限ったことではありません。

日本に生息する2種類のクマ

日本には二種類のクマがいます。ヒグマとツキノワグマです。

  • ヒグマ(エゾヒグマ): 北海道に生息。体が大きく力強い。
  • ツキノワグマ: 本州、四国に分布。比較的小柄で、木登りが得意。

さて、上記2種のクマともに冬は冬眠します。そのため、冬眠に入る直前の秋に大量の食べ物を摂取するのです。

つまり、クマにとっても「食欲の秋」が到来するのです。クマは本来「山の動物」ですが、「食欲の秋」には食べ物を求めてしばしば人里に降りてきます。

秋は熊被害の起こりやすい季節であると言えるでしょう。ということで、今回は秋に増加するクマの被害に備えるために役立つ情報をご紹介いたします。

クマによる被害はひとつ間違えば人命にも関わる危険を孕んでいます。端的なニュースの情報・対策だけでなく、クマの生態から「なぜ、この年、この時期に熊被害が増えているのか?」、その背景や理由を知ることが大切です。

地域住民一人ひとりがクマへの理解を深めることが、被害を防ぐための対策行動の後押しとなると考えます。

2023年の熊被害:最近のクマに関するニュース

2023年に全国各地で熊被害や目撃情報が増加しています。それらトピックスから一部をご紹介します。

各メディアで取り上げられ有名になったクマ

出典:最凶ヒグマOSO18、ジビエ料理で炭火焼になっていた! 提供開始後に判明…店「人を襲ってなくてよかった」

このニュースでは、東京のジビエ料理店が、北海道で66頭の牛を襲ったとして駆除されたヒグマ「OSO18」の肉を炭火焼きとして提供していたことが判明し、SNSで話題となっています。店側は、すでに肉を提供していたことから「人を襲っていないことがよかった」と述べ、2023年9月7日には「カムイオハウ(熊鍋)」として再提供する計画を明らかにしています。

OSO18は、2019年に初めて牛への被害を起こし、その後も多数の牛を襲っていました。このヒグマは2023年7月30日に駆除され、後のDNA調査でその正体が判明した。店側は「駆除されてよかった」とし、今後も食材として利用する予定とのこと。

この報告が公になって以降、店のフォロワー数が大幅に増加していますね。

クマによる人身被害

出典:クマに襲われ女性死亡 発見時「クマ、クマ」と 頭から出血し肩にクマの爪痕<岩手・一戸町>

2023年8月9日の夕方、岩手県一戸町で女性が自宅近くの山林でクマに襲われ、搬送された病院で死亡しました。岩手県内でクマによる人の死亡が起きたのは2020年以来となります。

事件現場は一戸町の中心部から約20キロメートル離れた住宅地に近く、警察は地域内での警戒を高めてパトロールを行っています。前回、県内でクマによる人の死亡が報告されたのは、2020年8月に発生した八幡平市での事例でした。

人間に慣れたクマ

出典:人を恐れない「新世代熊」 市街地も平然と 追い払い効果薄く

岩手県と宮城県で人間の生活圏に出没する「新世代熊」が増加しているとの報告があり、専門家らは警戒を呼びかけています。これらの熊は人間の活動音に慣れていて、人里に降りてきやすいとされています。

特に農家に対しては、農作業中に熊と遭遇するリスクが高まっているため、熊を寄せ付けない対策が必要だとされています。

岩手県では2023年4月から8月7日までに16人が熊によって被害を受け、宮城県でも住宅地での熊の目撃が報告されています。両県はホームページやSNSを通じて、熊出没に関する情報を積極的に公開しています。

熊が好む食物が豊富で、特に雌熊の出産が多かったことが、出没数の増加につながっているとみられています。

建物内に侵入するクマ

出典:クマが宿泊施設に侵入 客とあわや鉢合わせ…動物研究家「秋にかけて好奇心旺盛に」

栃木県日光市の宿泊施設で、体長約1mのクマが建物内に侵入する事件が起きた。監視カメラには、クマと宿泊客が危うく出くわしかける瞬間も捉えられています。

クマは約15分間、建物の中を自由に動き回り、造花をくわえたり、椅子に座ったりしており、当時、施設には約10人の宿泊客と従業員がいましたが、幸いにも人的な被害は発生しませんでした。

この事件は、これまで周辺で何度も目撃されていたクマによるものとみられ、建物内への侵入は初めてとのこと。このため、関係者は危機感を強く感じており、人が傷つく前に何らかの対策を講じる必要があると訴えています。

首都圏でも目撃されるクマ

出典:埼玉 秩父市 クマ目撃件数36件 注意呼びかけ

埼玉県秩父市でクマの目撃件数が急増しており、市が警戒を強めています。2023年4月から8月21日までに市内で36件のクマ目撃が報告されており、これは昨年度の1年間での31件を既に上回っています。

人的被害は報告されていないものの、市街地に近い公園を含むいくつかの場所で目撃があり、市は注意喚起の看板を設置し、パトロールを強化しています。特に、観光名所である羊山公園にも「熊出没注意」の看板が設置されています。

市は、「食料が山の高い位置で不足しているため、クマが低地に降りてきている可能性がある」と指摘し、市民と観光客に対する注意喚起を続ける方針で、近隣住民も、目撃情報が増えているため、警戒しているとのことです。

クマの保護管理に関する発見

出典:メスの野生ツキノワグマの一生を探る ~個体群レベルの繁殖と死亡を定量的に評価~

この研究は、日本の中部地方に生息するメスのツキノワグマの繁殖と死亡に関する定量的な情報を初めて明らかにしたものです。国際共同研究チームが、2005年から2019年までに群馬県、栃木県、長野県で駆除されたメスツキノワグマの歯と子宮の標本を用いて調査を行いました。

これらの情報は、ツキノワグマの個体群の保全や管理に役立つとされ、特に死亡率に関する新しいデータは今後の個体群動態の予測に有用であると期待されています。

クマの貴重性について

人身事故や農作物被害など何かと世間を騒がしているクマですが、クマは生態系の中でとても重要な位置を占めており、地域によって貴重種や重要種として指定され、保護されている側面もあるのです。

  • エゾヒグマ:石狩西武、天塩・増毛地方
  • ツキノワグマ:西中国地域、下北半島、紀伊半島、四国山地、東中国山地

いずれも、環境省レッドリスト(2020)の絶滅のおそれのある地域個体群に指定されています。また、多くの自治体で重要種等に位置付けられています。

参考:日本のレッドデータ検索システム

ツキノワグマの生態系内での役割

本州のツキノワグマを例に、生態系内での役割を4つ挙げます。

  1. 本種は食物連鎖の上位に位置し、他の生物種の個体数をコントロールする役割を果たし、生態系のバランスを維持しています。
  2. 果実食による種子の運搬、土壌昆虫や植物の根を探索するための土の掘り返しが林床を緩め、土壌の循環を支援しています。
  3. 小動物を捕食することで、その個体数をコントロールし、生態系内でのバランスを保ち、さらに他の動物の死骸なども食べる事で生態系全体の健全さの維持に貢献しています。
  4. 日本の民間伝承や信仰においても一部の地域で重要な存在となっていること、観光資源としての側面もあります。

クマの生態とブナの実の関係

クマは主に果物、魚、小動物などを食べますが、特にブナ等の堅果(実)が食事の大部分を占めることがあります。ブナの実の豊作年はクマの繁殖にも寄与し、逆に不作年は食糧を求めて人間が住む場所に出没する可能性が高まります。

詳しくは「クマの生態」も参照してください。

下図は、クマにとってメインの餌となるブナ・ミズナラの落果量(実が落ちた量)とツキノワグマの目撃頭数のグラフです。落果量が多い(右にいく)ほど目撃頭数は少なくなり、反対に落果量が少ない(左にいく)ほど目撃頭数は多くなっています。

画像:ブナ科堅果の落果量とツキノワグマの目撃頭数の関係

出典:森林立地/45 巻 (2003) 1 号「兵庫県氷ノ山山系におけるブナ・ミズナラの結実とツキノワグマの目撃頭数の関係

つまり、クマはエサが少ない場合、エサを求めて動きまわった結果、人里にまで降りてきてしまうのです。

秋にクマ被害が増えるのはなぜ?

秋はクマが冬眠に備えて大量の食物を摂る蓄積期間です。この時期、特に生息地の山中のブナ等の堅果類が不作の年には、クマは人里に下りてくる可能性が高く、被害が増加します。

下図は、各年を凶作年と豊作年に分類し、それによってツキノワグマの出没件数はどのように変わるのか、それぞれの月ごとの推移を表したグラフです。

画像:出没件数月別累計の推移

出典:兵庫 ワイルドライフモノグラフ「兵庫県のツキノワグマの出没状況と対策

熊被害発生のメカニズム

過去のデータによると、特に10月から11月にかけての被害報告が多くなってます。これはクマが冬眠直前に最も活動的で、食糧を求めるからです。

画像:メスのツキノワグマの生活史
画像:メスのツキノワグマの生活史

出典:東京農工大学「メスの野生ツキノワグマの一生を探る ~個体群レベルの繁殖と死亡を定量的に評価~

熊出没情報の入手方法

  • 地方自治体のウェブサイトやSNS
  • 地域住民からの情報共有
  • 防犯カメラやセンサーの設置

これらを利用して、常に最新の情報を手に入れましょう。

なお、環境省では全国都道府県別の直近5ヵ年のクマ類の出没情報についての速報資料(PDF)もウェブ上にアップしていますので、こちらも参考にしてみてください。

参考:環境省「クマ類の出没情報について [速報値]

また、当店では「トレイルカメラ」も取り扱っていますが、このような赤外線センサーで動物を感知して撮影するカメラも近隣や遠隔地でクマの動向をモニタリングする上で有効なツールとなります。

主要都道府県のクマ出没情報

以下では、クマ情報を発信しているいくつかの自治体のウェブサイトをご紹介します。自治体によってはサイト上の情報発信だけではなく、アプリやメールマガジンと連携しているところもあります。

主要な都道府県が発信している情報をご紹介しますが、ご自身がお住まいの市区町村単位でも情報を公開、発信していないか、チェックしてみてはいかがでしょうか。

※上術した埼玉県でのクマ目撃情報の増加、栃木県でのクマの建物侵入など、首都圏や観光地でもクマへの注意警戒が必要となっています(以下、埼玉県・栃木県のリンクも追加)。

※以下すべて参考リンク:最終更新日 2023/9/4

北海道「ヒグマ出没情報【市町村ヒグマ関連情報リンク集】

青森県「クマの出没に注意してください!

岩手県「ツキノワグマによる人身被害状況・出没状況について

宮城県「令和5年度クマ目撃等情報

秋田県「ツキノワグマ情報

山形県「クマに関する情報

福島県「クマ出没に注意

栃木県「令和5年度のクマ出没(目撃)状況

群馬県「クマによる人身被害が発生したので注意してください

埼玉県「クマ・イノシシに注意!

新潟県「ツキノワグマによる人身被害を防ぐために

富山県「ツキノワグマ出没情報地図【クマっぷ】

石川県「ツキノワグマによる人身被害防止のために

福井県「福井クマ情報

長野県「ツキノワグマによる人身被害を防ぐために

岐阜県「岐阜県に生息するクマ(ツキノワグマ)について

京都府「ツキノワグマについて(出没情報)

兵庫県「ツキノワグマによる人身事故防止について

島根県「クマの出没・被害状況と出没予測

広島県「ツキノワグマ

その他、クマ情報を発信している自治体のウェブサイトにアクセスするには、該当する自治体の公式ウェブサイトや緊急情報ポータルをチェックすることをお勧めします。多くの場合、動物に関する警報や注意喚起は自治体の公式ウェブサイトの「緊急情報」「生活情報」などのセクションで見ることができます。

また、地元の警察署や消防署のウェブサイト、地域のニュースメディアも時折、このような情報を提供しています。それらの情報は通常、X(旧 Twitter)やMeta(旧 Facebook)などのSNSでも共有されることが多いです。

自治体や関連機関が提供するスマートフォンのアプリもあり、それを利用することでリアルタイムでの警報や情報を受け取ることが可能です。

熊被害の事前予防と対応

事前予防

  • クマよけスプレー」を携行する
  • 熊鈴(ベル)」やラジオ等で音を発生させ、クマを寄せ付けないようにする
  • 発生したゴミはしっかり管理し、クマが寄ってくる要因を除去する
  • 出没情報をしっかりとチェックし、クマが出没する可能性のある場所への立ち入りはできるだけ避ける

緊急時の対応

  • クマを見かけたら、その場を静かに去った後に、施設利用者や管理者、市町村・警察等に周知する(決してその場では大声を出したりしない)
  • 後ずさりしてクマから離れる
  • 決して走って逃げない

最後に:クマにも優しく安全に秋を楽しむために

秋はとても美しい季節です。キノコ狩りや紅葉散策など魅力たっぷりのシーズンですが、クマ被害が増加するシーズンでもあります。

クマの出没情報や過去での目撃情報等を事前に確認すること、そして適切な知識と対策を行うことで、安全で、そしてクマにも優しい秋を楽しむことが出来ますね。

しかし、いくら気を付けたとしても、クマに遭遇してしまう、被害を受けてしまう可能性はゼロではありません。

「万が一被害にあってしまったらどうすればよいのか?」

熊被害と言っても、その内容は様々です。

「熊被害を避けるために具体的に何を、いつ、どのようにすればよいのか?」

このような疑問やお悩みがありましたらお気軽にご相談ください。

【鳥獣被害対策ドットコム】お問い合わせはこちら

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