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日本鳥学会2012年度大会 参加レポート

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」の湯浅です。

今日の鳥獣害対策の知恵袋は日本鳥学会2012年度大会の参加報告です。

9月に東京大学で行われた日本鳥学会2012年度大会に参加してきました。

今年は日本鳥学会創立100周年の記念大会でした。

100年前というとちょうど明治45年から大正元年になった年です。

そんな頃から研究していても、未だに鳥害を完全に防ぐことはできません。

(勿論、鳥学会の人達が鳥害の研究ばかりしていたわけはありませんが)生物の世界はまだまだわからないことだらけです。

学会というと、堅苦しく、一部の専門家達の集団というイメージですが、実は大会は参加費さえ払えば誰でも参加し、発表を聞くことができます。

発表には口頭発表(学校の授業のようなイメージでしょうか)、ポスター発表(壁新聞のようなものを作ります)などがあり、一つのテーマについて話し合う自由集会などもあります。

今年の大会でも、鳥害に関する発表はいくつかありました。

時間の都合もあり、全て聞けたわけではありませんが、面白かったものを2つほど紹介しようと思います。

1つめは「カラスの侵入を抑えるテグスの設置間隔と果樹園における設置方法」です。

カラスの侵入を防ぐためには防鳥網を張るのが確実ですが、より簡易な方法としてテグスを張る方法もあります。

ただし、テグスの間隔が広ければ、当然カラスは侵入してきます。

一体、何cm間隔でテグスを張れば、カラスは侵入できないのでしょう?

室内実験の結果では、針金(テグスの代用)の設置間隔を1mまで狭めると、カラスの侵入回数が大幅に減りました。

カラスの全長(50cmほど)と比べると広い気もしますが、狭い空間は通過したくないのでしょうか。

野外実験の結果でも、1m間隔でテグスを設置すると、テグスを設置しない場合と比べて、侵入回数が1/250以下食べられた餌の量が1/50以下になったそうです。

実際に果樹園に設置する際には、防鳥網とテグスを組み合わせるのが実用的でしょう。

2つめは「日本におけるカワウの集団繁殖地とねぐらの分布 その3」です。

カワウ画像

カワウは近年個体数が増えており、体も大きいため、アユ等の漁業被害が懸念されています。

また、集団で繁殖し、大量に糞をするため、林を枯らすこともあります。

では、具体的にはどのくらい増えているのでしょうか?

現地調査やアンケートを行った結果、2004年には100箇所足らずだったコロニー(集団繁殖地)が2010~2011年には200箇所弱に倍増していました。

また、コロニーとねぐらを合わせた総数は2004年は200箇所余りだったものが、2010~2011年には500箇所近くと、こちらも倍増していました。

また、2004年のねぐらの分布をみると、東北、北海道には大きな空白部分がありますが、2010~2011年には東北、北海道への分布拡大がみられます。

カワウの個体数はやはり相当増えているようです。

大会では他にも、

  • 鹿柵を張ることによって、鳥類は増えるのか?
  • カワウの繁殖を抑制するためには何が効果的なのか?
  • 自動撮影カメラを設置することでどんな鳥を記録できるのか?

等、鳥獣害と関わりのある発表がいくつかありました。

来年の大会は名古屋の名城大学で開催されます。

興味のある方は参加されてはいかがでしょうか?

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