シカ
ニホンジカ Cervus nippon(偶蹄目シカ科)
形 態 | 偶蹄目シカ科に属する大型の哺乳類である。 夏毛は茶色で白斑があり、冬毛は灰褐色である。黒い毛でふちどられた大きな白い尻斑をもつ。新生仔には細かい白斑がある。換毛期は5~6月、9~10月である。雄は角をもち、毎年生え換わる。雄は雌より体重比にして1.5倍以上となる。 また、サイズは亜種や生息地によって大きく異なる。最大はエゾシカ、最小はヤクシカである。 成体の体重は雄50kg~130kg、雌25~80kgで、季節によって増減がある。 頭胴長は雄90~190cm、雌90~150cm、肩高は雄70~130cm、雌60~110cmである。 |
---|---|
分 布 | ※全国的に分布は拡大傾向。 ベトナムから極東アジア(中国東部、ロシア沿海地方、台湾、朝鮮半島、日本)にかけて広く分布する。ヨーロッパ各地、ニュージーランド、アメリカには人為的に導入され、野生化している。日本では、北海道(エゾジカ)、本州(ホンシュウジカ)、四国、九州(キュウシュウジカ)、淡路島・小豆島を含むいくつかの瀬戸内諸島、五島列島、馬毛島(マゲジカ)、屋久島(ヤクジカ)、種子島、対馬(ツシマジカ)、慶良間列島(ケラマジカ、導入)などに分布する。 |
生息環境 | 常緑広葉樹林、落葉広葉樹林、寒帯草原など多様であるが、森林から完全に離れて生活することはなく、クヌギ・コナラ林やアカマツ林、スギ・ヒノキ造林地や里山など、明るい開けた森林に生息する。餌となる植物が多いため、林内以外に、林縁、伐採跡地、造林地なども餌場としている。積雪地域の個体群は雪を避け小規模な季節的移動を行う。 |
食性 | ※有毒な物質を含むアセビやシキミなど、わずかなものを除き、ほとんどの植物を食べることができる。 落葉広葉樹林に生息するエゾジカやホンシュウジカは、イネ科草本、木の葉、堅果、ササ類などを季節に応じて採食する。とくにササ類は積雪地域の冬の主要な食物である。常緑広葉樹林に生息するキュウシュウジカなどは食性の季節的変化は少なく、1年を通じて木の葉を採食する。 |
繁殖 | 1産1子で、毎年5~7月に子供を産む。 交尾期は9月下旬~11月で、初産齢は2歳。栄養状態が良い個体は、1歳から繁殖が可能になり、4歳以降は毎年繰り返す。 |
行動特性 | ※人の活動場所では夜明けや夕方の薄暗い時間や、夜間に行動する。 臆病で警戒心は強いが、危険がないとわかると大胆に農地に入ってくる。成獣は1.5m以上の高さを飛ぶことができる。一方で柵を飛び越すよりも柵の下へもぐりこんで侵入することが多い。 |
社会性 | ※集団性が強く群れをつくって生活する。他の個体との近接を許容するため、高密度化する。 通常、雄と雌は別々の群をつくる。娘は母親とともに群れをつくるが、雄は1~2歳で母親から離れる。一夫多妻制の社会で、雄の一部は交尾期になわばりをつくり、その中にハレムを形成する。一般的に、群れの大きさは開放的な草地環境では大きく、森林環境の多い地域では小さい。 |
参考文献
- 阿部永・石井信夫・伊藤徹魯・金子之史・前田喜四雄・三浦慎悟・米田政明(2005)日本の哺乳類[改訂版] .
東海大学出版会. - 特定鳥獣保護管理計画作成のためのガイドライン(ニホンジカ編)(2010)環境省
- 野生鳥獣被害防止マニュアル イノシシ、シカ、サル―実践編―(2007)農林水産省
-
○農作物、樹皮、牧草の食害による農林業被害
-
○林床植生の食害による稀少草本類の消失、土壌の流出
- イネ、飼料作物、野菜を中心に、ムギ、マメ類、果樹にも被害があります
- 農作物のほかに、特に餌の乏しい冬から早春の時期、二番穂や農地、林道、農道のり面、果樹園などの雑草を食べに集落にやってきます。
-
○果樹園などの雑草を食べに集落にやってきます
-
○餌場や隠れ家をなくす
- 家の周りや農地の周りの薮の草刈りを行い、隠れ場所を減らす※
- 廃棄する農作物を野外に放置しない※
- 生活ゴミ(生ゴミ)を食べられないようネットなどで防ぐ、ゴミを出す時間を守る※
- 番犬を飼う※
- ※地域ぐるみで実施することで絶大な効果を発揮します。
-
○捕獲する
- 「わな」により捕獲する。
- シカなどの大型獣の「わな」による捕獲は、1軒だけで行っても効果は期待できません。地域ぐるみで行うことではじめて個体数と被害を減らすことができます。
- 「わな」による捕獲は、鳥獣保護法、狩猟法などを遵守して適切に行う必要があります。これらの法律は県又は各市町村が管轄していますので、被害が出て「わな」で防除する場合は必ず自治体の担当窓口に相談しましょう。