1.電気柵とは? 電気が流れる仕組み
電気柵は、野生動物の侵入から農作物や農地を守るために設置する侵入防護柵です。柵線には高電圧がかけられており、動物がこれに触れると、電流が体を通って地面に流れ、アース棒を経由して電気柵本体へ戻ることで回路が成立 します。
▲ 図:動物が電気柵に触れたときに回路が成立し、電流が流れる仕組み
このとき、一瞬だけ電流が流れ、動物に電気ショックを与えます。その不快な経験により警戒して近づかなくなり、結果として、侵入を防ぐことができるのです。
このような電気ショックが発生するのは、電気柵が「動物が触れたときだけ電気が流れる仕組み」になっているためです。普段は電気が流れない状態(スイッチOFF)ですが、動物が電圧のかかった柵線に触れることで回路がつながり(スイッチON) 、電流が流れて電気ショックが発生します。
なお、動物の体のどこが柵線に触れるかによっても感電のしやすさは異なります。毛に覆われた部分では電流が通りにくく、感電が起きにくい場合がありますが、鼻先や肉球などの皮膚が露出した部位 が接触することで、効果的に電気ショックが発生します。
人間が電気柵に触れた場合も同様で、「バチッ」と一瞬の電気ショックを感じます。このとき強い痛みはありますが、1.安全な電気柵選び にもあるように、安全に設置・運用されていれば、ケガや失神といった深刻な危険が生じることは基本的にありません。
このように、電気柵は「動物が触れたときにだけ回路が一時的に成立し、電気が流れる」仕組みで動作しています。 たとえば、柵線の上にトンボが止まっていても感電しないのは、トンボの体が地面と接しておらず、電流が流れる回路が成立していないためです。
電気柵の特徴 他の柵とは違う4つのポイント
1 電気柵は心理柵
電気柵は、イノシシやシカ、ハクビシン、アライグマなどの害獣に対して、軽い電気ショックで驚かし、侵入を防ぐ「心理柵」 です。
動物に対して、あくまで軽い電気ショックを与えるだけですので、触っても死傷したり気絶をしたりすることはありませんが、動物は、一度鼻先でワイヤーを触り、電気ショックを受けると、その痛みと恐怖を学習・記憶し、それ以降は電気柵に近づかなくなります。
電気柵が「心理柵」と呼ばれるのは、このような効果に由来します。
※人が誤って触ってしまっても、ビリッとするだけで、通常、人体に影響はありませんが、ペースメーカーを付けている方は絶対に触れないように注意してください。
2 電気柵は費用対効果が高い
電気柵は、金網柵やネット柵と比較して、費用を安く抑えることができます。
また、他の防護柵と比較して、重量が軽い という点も大きなメリットです。
▲ 図:設置コスト別・代表的な獣害対策用 防護柵の比較
3 電気柵は設置が簡単
電気柵と聞くと、「電気に詳しくない素人には設置が難しいのではないか?」と思われがちですが、実は非常にシンプルで、初めての方でも簡単に設置できてしまいます。
電気柵の設置に必要な作業は、
①草刈りをする
②ポール(支柱)を立てる
③ワイヤー(柵線)をひっかける
④ワイヤー、電源装置(電気柵本機)、アース棒を接続する
⑤正しく設置できているかチェックする
のみですから、100m程度の設置であれば、ほんの数時間で設置は完了 してしまいます。
以下、準備から設置、チェックまで、もう少し具体的な流れをご説明します。
【準備】 ①事前に設置場所の草刈りをしておきます。 ②次に、ポール1本を畑に打ち込み、打ち込み深さを決めます。 ③ポールの打ち込み深さを決めたら、設置に必要な本数を並べ、打ち込み深さと、クリップ(碍子)の設置位置にマジックなどでマークを着けます。 まずは打ち込み深さのところに1か所マークを付け、そこから20㎝、40㎝(イノシシ対策用2段の場合)のところにそれぞれマークを付けていきます。 ④ポールにクリップをセットします。クリップはツマミの部分を押すと直径が広がり、ポールに付けやすくなります。 クリップを付ける作業は、屋内などの作業しやすい環境で実施するとスムーズに終わります。
【設置】
①まずは、四隅となる場所を決め、そこにポールを打ち込みます。特に角部は内側へのテンションが強くかかりやすいので、ポールの本数を増やしたり、打込み間隔を狭めて強化するなどの対策を図ってください。
②角部のポールの打込みが完了したら、ワイヤーを延ばしてライン取りをします。
ポールを打ち込む前にこの作業をしておくことで、きれいな直線で柵を設置することができます。
また、ワイヤーを延ばす際は、ポールをワイヤーボビンの穴に通すとスムーズに延長することができます。(上写真参照)
③延ばしたワイヤーのラインを目安に、等間隔にポールを打ち込んでいきます。
基本は4m間隔ですが、凹凸などの変化がある場合は4mにこだわらず、地面とワイヤーとの距離が一定になるよう、本数を増やして調整してください。
特に、地面と1段目のワイヤーとの間隔が開きすぎないように気を付けてください。
獣の侵入を許す原因となってしまいます。
④全てのポールの打込みが完了したら、クリップにワイヤーを通していきます。
その際、針の穴に糸を通すように、クリップの穴にワイヤーを通すのではなく、クリップにひっかけるようにすると簡単に通すことができます。(以下動画参照)
⑤電源装置を固定します。
アース棒を地面に深く打ち込み、電源装置の(-)端子とアース棒を接続させ、(+)端子をワイヤーに接続させれば完成です。
【チェック】
①設置した電気柵の外周を見て回り、地面と各段のワイヤーとの間隔が開きすぎていないか、ワイヤーが雑草などに触れていないかを確認します。
②電源装置の電源をONにして、各段ともに通電しているか、また、推奨値まで電圧が出ているか、テスターを使用してチェックします。
【参考商品】
ガラガーミニソーラーS16xイノシシ対策用 電気柵100mセット[2段張り]
デジタルボルトメーター(DVM-3)
4 電気柵の維持管理はこまめに
電気柵の利用で気を付けたいのは、なんといっても漏電です。
漏電は、地面の草が伸びて柵線に触れたり、落枝がワイヤーに絡むことで発生します。
中でも、特に気を付けたいのは「つる植物」 です。
地上から延びたつるがポールに絡まり、それがワイヤーに絡みついてしまうと、そこから漏電してしまい、電気柵本来の効力が失われてしまいます。
設置した電気柵の効果を最大限発揮するためにも、電気柵周辺の下草刈りは定期的に行うようにしましょう。
ちなみに、草刈り機を使用する場合に、ポールごと刈ってしまわないように、ポールとワイヤーの距離を広く取るようなクリップ(下写真・動画参照)や、防草シートの中にステンレス線が張られている「通電シート」など、定期的なメンテナンスを効率化する便利な商品もあります。
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【参考商品】
突出しクリップ 150mm 14型(50個入り)