【実録】音響・超音波レコーダー「Chorus」で野鳥モニタリング|神奈川の里山での活用事例を公開
投稿日 : 2026年01月28日

こんにちは、(株)地域環境計画の印部です。 今回は「鳥獣被害対策ドットコム」で販売している「音響・超音波レコーダーChorus(コーラス)」を使い、野鳥の鳴き声のモニタリング調査を開始しましたので、その報告です。
目次
1. Chorus(コーラス)の概要
Chorusは、Titley Scientific社(オーストラリア)の音声記録装置で、コウモリ類のほか、鳥類やカエル類の鳴き声を録音する機器の一つです。鳥獣被害対策としてはニホンジカの咆哮調査にも使用されています。
私がこのレコーダーに注目した理由
- 堅牢な構造:作りがいわゆる「お弁当箱タイプ」と通称されるしっかりとした構造で、悪天候下のフィールドでも安心して使用できます。
- 汎用乾電池:特殊なバッテリーではなく、汎用性の高い乾電池が使用できる点も魅力です。
- 操作性の良さ:近年の機器に多い「スマホアプリ経由の設定」を必要とせず、本体のみで直接録音設定が完結します。
- 1台での汎用性:鳥類やカエル類だけでなく、超音波録音が必要なコウモリ類までカバーできます。
- 無償の専用ソフト:コウモリ類の音声解析において、フィルタ機能や分類木解析を備えた専用ソフト「Anabat Insight」が無償で利用できます。
- サブスクリプション(定額制)ではないため、導入後のランニングコストがかかりません。
- ※鳥類やカエル類については、録音と再生は可能ですが、機器本体や専用ソフトに高度な解析機能はありません。
私はChorus以外の録音機器も使いますが、これから野生動物の鳴き声の音声解析に取り組んでみたい方には、Chorusは「1台で何でもできる」という点で良い選択肢になると思います。
2. モニタリング調査の実施環境
今回、Chorusのモニタリング調査を行っているのは神奈川県の里山で、シラカシ、コナラ、スギ植林が混在する典型的な関東平野の里山林です。

Chorusには、鳥類の鳴き声を録音するための「アコースティックマイク」と、コウモリ類の音声を録音するための「超音波マイク」があります。録音スケジュールの設定次第では、両方のマイクを同時に取り付け可能ですが、今回は以下の目的のためにアコースティックマイクのみを装着して調査を行いました。
目的
関東平野の鳥類の鳴き声を録音し、のちにスペクトログラム(声紋)へ変換してAI学習用ファイルを作成すること。



写真:(左)アコースティックマイク / (中)超音波マイク / (右)アコースティックマイク使用例
3. 現地での設置と初期設定
現地に到着すると、Chorusを設置する適当な樹木を見つけて、シュロ縄で固定します。
- GPSによる自動設定:電源を入れると自動的にGPS機能が衛星を探し、設置場所の緯度・経度を取得するとともに、時刻が自動設定されます。
- タイムゾーンの設定:この際、事前にタイムゾーンの設定を忘れずに行ってください。日本はUTC+9時間です。

4. 録音モードの設定(鳥類の場合)
鳥類を対象とする場合、以下の4つの録音モードから選ぶことができます。
- ① 夜間録音モード(Night Mode)
- ② 夕暮れと夜明けの録音モード(Dusk & Dawn Mode) ※今回使用
- ③ 日中録音モード(Day Mode)
- ④ 連続録音モード(Continuous Mode)
メニューにない複雑なスケジュール設定をする場合は「Anabat Insight」を使って設定すれば可能ですが、通常の調査等であれば①~④でほぼ設定は網羅できると思います。
今回のモード②の詳細動作
日没の90分前にオン、日没の90分後にオフ、日の出の90分前にオン、日の出の90分後にオフになります。具体的な時間はGPS機能により自動設定されます。
5. Chorusの録音設定詳細
今回のChorusの録音設定は以下の通りです。
- マイク:コネクタAを使用(アコースティックマイクのみ)
- SDカード:128GB
- Filetype:WAV
- SampleRate:48k
- 録音:モノラル録音
- GAIN:12dB
- MAXFileLength:1hr
- FilePrefix:Rec.Type
- TimeZone:+9h
MAXFileLength(最大ファイル時間)は、1回の録音でファイルを分割する時間ですが、今回は区切りよく1時間としました。設定項目にエラーがあると、液晶画面のダッシュボードの下部にメッセージが出るので、異常がないかを確認した後、指を2~3回鳴らし、画面に表示されるVUメータ(音量のインジケータ)が反応しているかを確認します。

6. 運用上の注意と稼働確認
設定時には日本の光学機器にあるような「設定専用モード」がありません。電源を入れるとすぐに設定モードに入り、しばらく放置すると録音が自動的に始まってしまうという海外製品にありがちな仕様です。
蓋を閉じてしばらくすると前面LEDランプの点滅が終わり、設定②では録音の待機モードに入ります。蓋を閉じてカギをかけた際、きちんと稼働しているか不安になりますが、この時に役に立つのが付属している磁石(ストラップの端)です。 これをケース前面の磁石シンボルにやや横長の向きにあてがうと、前面LEDランプが点滅し、ユニットが正常に動作していることが確認できます。

7. データの回収と内容確認
1回目の設置期間は、2026年1月11日設置、1月18日回収としました。回収したSDカード内は日付ごとにフォルダ整理されており、各フォルダ内では録音時刻がファイル名になっています。
ファイル名の接頭文字の設定は選ぶことができますが、今回は「Rec.Type」を選択したため、ac(アコースティック)が接頭文字として追加されています。


8. 音声解析とAI学習用データの作成
回収してきた録音ファイルをまずは大雑把に確認してみます。専用の無料アプリ「Anabat Insight」でも音声の再生とスペクトログラムの表示は可能ですが、本アプリはコウモリ用のため、鳥類の解析には向いておりません。 このため、無料のAudacity(オーダシティ)で波形とスペクトログラムの特徴を大雑把につかみ、AIの学習用に適していそうなファイルを選びたいと思います。
1月15日の録音ファイル例
録音開始時刻を同日の日の出・日の入り時刻と照らし合わせると、正常に機能しているようです。1時間の分割設定により、日の出時に3ファイル、日没時に3ファイル録音できました。
- ac_2026-01-15_05-21-05.wav (日の出90分前に開始)
- ac_2026-01-15_06-21-05.wav
- ac_2026-01-15_07-21-05.wav
- ac_2026-01-15_15-22-02.wav (日没90分前に開始)
- ac_2026-01-15_16-22-03.wav
- ac_2026-01-15_17-22-03.wav
Audacityでスペクトログラムを表示すると、冬季ということもあり、日の出前と日没後はほとんど鳥類が鳴いておらず、上から3番目の「ac_2026-01-15_07-21-05.wav」に鳥類の鳴き声が多く含まれていそうだということがわかります。
※日没90分前の騒々しそうなファイルは近くの工場の作業音でした。

9. スペクトログラムへの変換工程
学習用ファイルを「1秒間の重複を設けながら3秒間隔」で分割し、これをスペクトログラムに変換します。AI学習の前処理としてノイズ処理や音量の正規化(ノーマライズ)を実施する場合もありますが、今回は一長一短を考慮し、前処理をせずにそのまま変換します。
技術的なポイント
スペクトログラムへの変換(短時間フーリエ変換)には、パラメータである「窓サイズ」や「窓のずらし幅」をサンプリングレートに合うように設定する必要があります。さらに、画像の縦横比や周波数軸の最大値なども見え方に影響します。これらの組み合わせが多岐にわたることが、AI音声解析の標準化を妨げている要因だと思われます。
Pythonを使い、学習ファイル(1,797ファイル)を変換した結果が以下の通りです。ハイパスフィルターを使っていないため、2kHz以下では風の音などが原因で黒い帯ができていますが、前処理しないことを重視しています。

10. 【参考】実際に録音した野鳥の鳴き声とスペクトログラム
関東の冬の里山に生息する野鳥の鳴き声をスペクトログラムとともに聞いてみましょう。
※音量にご注意ください。






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