前回投稿したブログでは、夜間でも撮影が可能な赤外線カメラを搭載したドローンで、東京都あきる野市の秋川流域でイノシシが撮影されたことを紹介しました。
なぜ、私たちは、こんなことをしているのか?
というと、「2014年11月に東京都府中市でJR武蔵野線に衝突したイノシシ」というニュースがありましたが、
この時のイノシシは、『どこからやって来たのか?』と不思議に思い、そこで“多摩川伝いに移動してきたのではないか?”と仮説を立て、それの検証のために夜間ドローン調査を行うことにしました。
今回は、『より市街地に近い多摩川河川敷までイノシシが出てきているかどうか?」を検証するために、赤外線カメラを搭載したドローンを使い、再度確認調査を行いました。 (なんと、NHKさんの取材同行でした!)
ドローン空撮 夜間生態調査レポート
こんにちは「鳥獣被害対策.com」を運営する(株)地域環境計画の佐々木です。
前回に引き続き、赤外線カメラを搭載したドローンを使って、東京都郊外の市街地に接した地域に生息するイノシシの実態に迫ってみました。
実は今回、NHKさんの「クローズアップ現代+」という番組で、「アーバン・イノシシ物語 ワシらが都会を目指すワケ」(2019年5月8日(水曜日)放送)と題し、市街地に出没する野生動物の特集が組まれるということで、その取材を受けながらの実施となりました。

今回の調査地は、前回よりもさらに東側で市街地に近い、昭島市と八王子市の境界付近の多摩川流域を設定しました(下図★印参照)。
実は、この場所よりも東側は、住宅地が広がっており、樹林はほとんどなくなります。
いわば、人間とイノシシの境界線といった場所がココなのです。
同行されたNHKの取材スタッフさんは、こんな住宅地の近くにイノシシがいるなんて・・・半信半疑そのもの・・・。
調査を行う私たちも、周囲には畑地もなく、イノシシは多摩川の河川敷を移動経路として利用しているのみであろう、と予想していたので、調査のタイミング次第では見つけることはできないかも・・・と、半信半疑の状態からのスタートでありました。
下のメッシュ図は、平成23年度までにイノシシの生息が確認された地域(色付き)を示しています。 この段階でのイノシシの生息分布は、もっと西側の山深い場所に限られていました。

前回の調査地や周辺市街地との位置関係は、下のGoogleマップの航空写真を参照してください。 本当に市街地に隣接していることがわかると思います。


今回の調査地のロケーションはこんな感じです(下流側から上流側を臨む)。

機体とカメラは前回同様以下の仕様で臨みます。
【ドローン機種】
・MATRICE 210RTK(DJI社)
【搭載カメラ】
赤外線カメラ:Zenmuse XT(DJI社)
※夜間に飛行しますので、航空法上で必要とされる承認を得たうえで行いました。

さて、いよいよフライト開始です。
日没後30分ほど経過してからのスタート!
果たして、イノシシは多摩川河川敷まで出てきているのか?
まずは河川敷に怪しい熱源がないかを探し回りました。
※赤外線カメラの設定は、相対的に温度の高いものが黒く表示される設定としています。
・・・さすがに、簡単には見つかりませんね・・・しばらく探し続けます。
国道16号線の橋の近くで、少し小さな動く熱源を発見!
近づいてみます。
体をくねくねと動かしながら歩いているのがわかります。この身のこなしから、ハクビシンではないかと思います。
本命のイノシシは未だに発見できず・・・
続けて、目を皿のようにして探します。
再び草むらの中に熱源を発見!
すぐ近くには、自動車も通っています。
ドローンを近づけてみます。
動きませんが2頭いるようです。
体形が寸胴ですので、イノシシっぽいですね。
イノシシかな~なんて悩んでいると、突然、ダッシュで逃げていきました。
ビンゴ!
イノシシですね。
その後は、隠れているつもりなのでしょうか。動きません。
しかし、1分もしないうちに動き始めました。手前の1頭が少し大きいので、こちらがおそらく母親、奥の1頭はかなり成長した子だと思われます。
当初、私たちの想定では、このあたりの多摩川に出没するイノシシは、広範囲を移動するオスだと思っていたため、メスと子供が見つかるのは少々意外な発見でした。
そんなことを考えていると・・・んっ?
この動画をじっくりと観察してください。
手前の個体が、少し腰を落としました。
・・・そうです、糞をしていたのです(大胆不敵)!
ドローンで撮影した映像には、イノシシの「落とし物」もちゃんと写っています!
赤外線カメラって、“すんげぇー”と改めて驚かされました。
その後は何食わぬ姿で、たまに頭を上下させて何かを食べているようです。
いかがでしたか?
多摩川の河川敷に、またもやイノシシがいましたね。
さらに、前回の確認地点よりも都心に近い下流側です。
さらに、これよりも下流側には、まとまった樹林はありません。
確実に、イノシシは生息範囲を広げ、私たち人間が密集して生活する住宅地のすぐ隣にまできていることが分かりました。
まさに「クローズアップ現代+」で特集された「アーバン・イノシシ物語 ワシらが都会を目指すワケ」になってしまっています。。
今回の撮影を通じて、NHKスタッフの方々も、東京都のこんな住宅地の近くにイノシシがいたことに驚いていました。
さて、イノシシの撮影もできたので、少し休憩していると・・・
我々の近くの藪の中から「バキ、バキッ」という音が聞こえてきました。
もしや!・・・緊張が走ります・・・
正体を探るべく、再びドローン、テイクオフ!
ドローンを真上に上昇させ、音が聞こえてきた方向へ赤外線カメラを向けます。
私たちとの距離、約20mのところに先ほどのイノシシ2頭が迫っていました!
こちらはドローンの離発着所周辺を照明で明るく照らしているため、イノシシは私たちの存在に気付いていると思われます。
しかし、これ以上近づいてくる様子はないものの、逃げていく素振りもありません。
おそらく、「人間を“怖い存在”として認識していない」のだろうな、と改めて感じました。
最後に周辺を一回りし、ノウサギさんを確認後、離発着地点に戻ってきてもイノシシと我々の位置関係は変わらず。。。
これにて調査終了としました。
今回、イノシシがいたのはこんな場所です。
ぱっと見、緑が多いように感じますが、この写真の奥には住宅地が広がっています。


【今回の調査でわかったこと】
・親子と思われるイノシシ2頭が、住宅地に隣接する多摩川の河川敷に出てきていた
・ドローンに対して、はじめだけ逃げ出したが、すぐに気にする素振りは見せなくなった
・人に対して、向かってくる様子はないが、逃げていく様子も確認できなかった
【結果から言えること】
・親子連れと思われる2頭が確認されたことから、より広範囲を移動する雄個体が、多摩川河川敷を移動経路として広く利用する可能性は十分に考えられる
・すでに、住宅地との境界にまで、イノシシが進出してきているので、頻度は少ないにせよ、住宅地に出没する可能性は十分に考えられる
・人馴れまではしていなくても、人を恐れないイノシシは、思わぬところで人と鉢合わせする可能性がある
→パニックになったイノシシは、どのような行動をとるか予測がつかないため、ここで事故が起こる可能性がある
以上から、東京都の市街地といえども、イノシシが出没することは「ありえない」ことではなく、「ありえること」として認識しておくべきである。
ということで、数年前に武蔵野線に衝突したイノシシは、やっぱり多摩川伝いに移動してきたのかな、という思いを強く持ったのでありました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
佐々木 孝太郎
【保有資格】
技術士(環境部門:自然環境保全)
生物分類技能検定1級(動物部門:魚類)
無人航空従事者試験1級
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【鳥獣被害対策.com】
野生動物の被害を防ぐ対策用品を買うならココ!
イノシシ対策に有効な電気柵から防護柵、箱わな・トレイルカメラ等、
獣害対策グッズ300点以上の品揃え!
https://www.choujuhigai.com/
【メールマガジン】
鳥獣被害対策.comでは、商品の割引情報など
お得な情報が満載なお知らせを、配信しています!
ぜひ、登録してみてください!
⇒お知らせメール登録はコチラ
[運営会社]
株式会社 地域環境計画
[関連サイト]
屋外防犯用品の販売サイト| Fieldsaver.com