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夜間に活動するイノシシの行動を観察する方法とは? ~赤外線カメラを搭載したドローンでイノシシを追ってみた~

夜間に活動するイノシシの行動を観察する方法とは? ~赤外線カメラを搭載したドローンでイノシシを追ってみた~

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」を運営する(株)地域環境計画の佐々木です。

2014年11月「東京都府中市でイノシシがJR武蔵野線に衝突!」これは、なかなか衝撃的な報道でした。

都心と比べれば、やや緑が増えるとはいえ、府中市はまだまだ住宅密集地域です。

さすがにイノシシが定住できる環境ではありません。

我々の本業は、動物の生態調査。

なので、この情報を聞いたとき、まず先に、「一体どこにいたのよ??」という、疑問が浮かびました。

今回のブログでは、この疑問に迫ってみたいと思います。

個体数が増加し、農業被害が増えているイノシシ。

最近では、住宅にも入り込み、被害が拡大しています。

でも、「〇〇でイノシシ出没」といった報道は、ここ数年でも東京都郊外のあきる野市や福生市、八王子市で散見される程度。

よほど人馴れしたイノシシでない限り、昼間に見かけることはほとんどありません。

人里近くの山林に棲むイノシシは、夜になると麓に下りてきて、耕作地や民家の庭先などに出没します。

足跡や糞などの痕跡の存在や、たまに出くわす個体の目撃などで、そこに「いる」ことはわかっていても、「実際どのくらいいるの?」ってところは、「実際に見えていない」ので想像の域を出ません。

・イノシシ足跡

・イノシシ糞

・イノシシ掘り起こし

そこで今回は、ドローンを使って「今まで見えていなかったものを“見る”」ことにチャレンジしました!

夜間ドローン空撮によるイノシシ調査

場所は、数年前までイノシシの確認が無いけど、「今ならいるかも!」と思えた場所として、東京都のあきる野市と八王子市の境界付近の秋川流域を設定しました(下図★印参照)。

ちなみに、下のメッシュ図は、平成23年度までにイノシシの生息が確認された地域(色付き)を示しています。

出典:左)「第4次東京都農林業獣害対策基本計画 平成28年4月 東京都産業労働局」に加筆

また、下のGoogleマップの航空写真を参照すると、おおむね赤線より西側(見た目左側)の山林がイノシシの分布するエリアに偏っています。

右)Googleマップより引用。一部加筆。

今回設定した調査地(★印)は、平成23年度時点ではイノシシが確認されていなかった加須丘陵の縁となります。

調査地そのものは、樹林に囲まれた17ha程度の狭い耕作地ですが、周辺は道路や宅地、ゴルフ場などとなっており、西東京の山林との連続性は、分断されつつある状況です(下写真参照)。

注)Googleマップより引用。一部加筆。

注)Googleマップより引用。一部加筆。

さて、あとは視覚的に「イノシシがめっちゃいるやん!」を体感する方法です。

今回は、ドローンの中でも少し特殊な赤外線カメラとズームカメラ(可視光)を積んだ機体を使用しました。

【ドローン機種】

  • MATRICE 210RTK(DJI社)

【搭載カメラ】

  • ズームカメラ(可視光):Zenmuse Z30(DJI社)
  • 赤外線カメラ:Zenmuse XT(DJI社)

夜間に飛行するため、航空法上で必要とされる承認を得たうえで行います。

・今回の調査で使用したドローン

夜間ドローン調査開始

日没30分ほど経過した後、周囲が暗闇に包まれた状態から、撮影スタートです。

実際問題として、本当にイノシシは出没するのだろうか?

そんな思いを抱きながら、ドローンはテイクオフ!

ドローンは、闇の中に吸い込まれていきます。

ちなみに、赤外線カメラは、相対的に温度の高いものが黒く表示される設定としています。

まずは、最初の動画をご覧ください。

皆さんも、すぐにわかりましたか?

この豚さんのようなシルエットは、そう、イノシシですね。

最初にイノシシを確認した時は、30mくらいまで近づいていますが、逃げる様子はありませんでした。

しかし、さらに近づいてみると、イノシシは一瞬止まって逃げ出しました。

イノシシは、夜間なのでドローンの姿は見えていないけど、回転翼の音が近づいてくるのがわかり、逃げ出したのでしょう。

そして、草むらに逃げ込みました。

草むらに逃げ込んだイノシシは、隠れているつもりなのでしょうけど…赤外線カメラにはバッチリ見えていますよね。

その後は、距離を詰めずにその場で観察を続けました。

このイノシシは、ドローンを気にしながらも、一気に逃げるのではなく、少しずつ遠ざかっていきました。

通常、夜間の活動をほとんどみることがないイノシシですが、ドローン+赤外線カメラを使うと、夜間の行動が手に取るようにわかりますね。

バッテリーを交換して、再び観察を続けます。

次の動画の最初の部分ですが、右側前方の約300m先に、小さな黒い点がみえてきます。

ココに注視してください!

目が慣れてくると、この距離からの映像でも、動物らしきものの「有・無」を見分けることが可能となります。

シルエットからもイノシシの親子であることがわかりますよね。

この親子イノシシには、20mくらいまで近づいてみました。

親の方は農道上でドローンの羽音を気にしている様子ですが、一気に逃げ出す感じはありません。

その後は、親子ともども草むらに入り、姿が見え隠れしてしまいますが、深い草むらの中でも、動きがあれば追跡は容易ということがわかります。

最後は林内に入り、消えていきました。

さすがの赤外線カメラでも、イノシシが深い森に入ってしまうと、確認するのは難しいようですね。

さて、動画を確認した皆さん、動画では何頭のイノシシを確認することができましたか?

最初は「3頭いる!」と思ったのではないですか?

そして、しばらくして2頭(親子)だ、と思ったのではないでしょうか。

どやら最初に移った黒い影のうち、最後まで動かなかった影、これは日中に温められたコンクリ塊のようなものだと判断できます。

ちょっとした、ひっかけ問題みたいですね。

次の動画が今回最後のフライトとなります。

実は、イノシシ以外の野生動物の姿を見ることができました。

注意しながら、よーく確認してみてください。

動画では、耕作地に小さな黒い点が1つ、右側の樹林にいくつかの黒い点がうごめいているのがわかります。

結構な数がいそうです(ゆっくりカウントしたら、樹林内に最低6頭はいたようです)。

このうち、耕作地の小さな黒い点は、動きがイノシシっぽくないですよね。

ドローンで、もう少し寄って、じっくり観察してみると、樹林の方のイノシシ(らしき動物)を気にしている様子です。

この動物は、足運びやしぐさ、シルエットから、どうやらタヌキのようです。

ちなみに、この動画も20m程度まで接近していますが、ドローンを気にして逃げ出す様子は見られませんでした。

今回使用した黒い機体のドローンは、四隅に赤と緑のランプが点灯していますが、夜間は動物に認識されづらいようです。

黒いドローンは、夜間の観察には都合がよいですが、追い払いなどをする際はドローンを目立たせる一工夫が必要かもしれないですね。

まとめ

ドローンからの夜間撮影の様子、いかがでしたでしょうか。

赤外線カメラで上から観察すると、イノシシや、ほかの動物の行動が手に取るようにわかりますよね。

ちなみに、この地域では、平成23年度には、イノシシが確認されていなかったのですが・・・既にいるんです!

さらに、短時間のうちに確認された場所が離れているので、すべてが別の個体である考えると、都合9頭のイノシシ(またはその可能性のある動物)が、この耕作地に出没していることがわかりました。

約17haの耕作地に9頭です!

イノシシが確認された場所は以下の3カ所です。

注)Googleマップより引用。一部加筆。

今回の結果から、この耕作地に隣接する加須丘陵の山林には、イノシシが普通に定住している可能性が高いといえるでしょう。

また、時間帯が変われば、イノシシが利用する場所も変化することも想定できます。

一晩、じっくりとイノシシを観察すれば、耕作地へのイノシシの被害対策を検討するうえで、非常に有意義な情報が得られるのではないかと思います。

さて、はじめに書いた「府中市で武蔵野線に衝突したイノシシはどこから来たのか?」の疑問について。

今回撮影した場所は、府中市から多摩川を遡ること約18㎞の場所です。

河川敷には緑が多く残っており、河川沿いを動物が移動経路として利用することは十分可能であると考えています。

なので、少し距離はありますが、秋川→多摩川沿いを移動してきたのかな?と思っています。

今回の調査で、私は、多摩川水系一帯にはどの程度のイノシシが生息しているのか、俄然、気になり始めました。

次は、多摩川本流の実態について迫ってみたいと思います。

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この記事を書いた人

佐々木 孝太郎

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