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「防獣ネット アニマルネット2300」設置事例:手順と注意点も分かりやすく解説

「防獣ネット アニマルネット2300」設置事例:手順と注意点も分かりやすく解説

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こんにちは、「鳥獣対策対策ドットコム」の井上です。

今回は「防獣ネット アニマルネット2300」の設置協力ということで、岐阜県飛騨市の山中、池ケ原湿原に行ってきました。

この湿原スゴイです。

今まで、趣味でいろいろな湿原を見てきましたが、トップクラスの美しさです(この感動は、ブログ末尾にしますね)。

画像:池ケ原湿原

「アニマルネット2300」設置に至る背景

画像:イノシシイメージ

「アニマルネット2300」の設置に至る背景は、近年、湿原にイノシシやシカなどの大型獣が侵入し、荒らしてしまって困っていることが原因でした。

特に、イノシシは湿原に生育するミズバショウを掘り起こし、その根を食べてしまうために、美しい湿原の景観を大きく損ねるのだそうです。

ちなみに、ツキノワグマもミズバショウを食べますが、クマが食べるのは花や実だけで、根茎は残るので、次年も美しい花を咲かせることができますが、イノシシは根を食べるため、掘り返されてしまうと、次年はミズバショウを見ることができなくなってしまいます。

ちなみに、池ケ原湿原はとてつもなく雪深く、5月20日なのに山影には残雪もみられました……

なので、降雪期にネットの取り外しが容易な、「アニマルネット2300」が選ばれたそうです。

※防獣ネットの選び方について知りたい方は、防獣ネットの設置方法と選び方【獣の侵入を確実に防ぐためのガイド】もご参照ください。

「アニマルネット2300」資材の説明

画像:アニマルネット2300資材一式

まずは、搬入された資材の説明です。

搬入された部材は、支柱上部、支柱下部、ネット、ペグのわずか4種類のみ!

画像:アニマルネット2300/60m資材セット(当店取扱いセット組)内訳

部材が少ないということは……

つまり、設置作業が楽!

業界用語では、施工性が高い!

この施工性。侮るなかれ、今回の山間のような現場では、とても重要なのです。

資材仮置き場から、何度も何度も山中にピストン輸送、さらに斜面だったり、足場が悪かったりと、長距離設置であれば、あるほど……これが夏場の設置だったとしたら……末恐ろしいですね。

皆さん、わかりますよね!

多くの方が「アニマルネット2300」を選択される理由で一番多いのはコレなのです!

さらに、「アニマルネット2300」が好まれる理由はそれぞれの部材にもあります。

資材①:アニマルネット2300

画像:アニマルネット2300 梱包イメージ

まずはネットです。

ネットは1巻30mあり、ネットの上端と下端には、太いロープが通っています。重さは5.3㎏と持ち運びにも苦労しません。

画像:アニマルネット2300 目合い
画像:アニマルネット2300 仕様図

また、ネットにはステンレス線が編み込まれているので、獣に噛み切られづらい構造となっています。さらに、ネットのマス目は1辺が6㎝と小さいので、シカの角も絡みにくくなっています。そして、何よりもネットの色が黒なので、景観への影響も極力配慮しています(支柱も黒です!)。

池ケ原湿原は、岐阜県の特別保全緑地地域に指定されているので、こういった景観配慮は大切ですよね!

ちなみに、ネット丈は支柱よりも長い設計となっています。これは、余った分のネットを地面に敷きならし、それをペグで固定することで、イノシシやシカの潜り込み防止の効果を狙っています。

資材②:ガイシ付FRP支柱 FRP250

画像:ガイシ付FRP支柱 FRP250

次に、支柱です。

支柱はジョイント式になっていて、下部が約90㎝(埋込部分の40㎝を除く)、上部が約120㎝、合計で地上高210㎝が確保されていますので、シカにも十分対応しています。また、素材のFRPは、軽くて丈夫という特徴から、自動車の部品、船舶の船体、建築材料など、様々な分野で使用されています。

画像:ガイシ付FRP支柱 FRP250 仕様

しかも、上・下が分離できるジョイント式なので、埋込がとてつもなく楽ちんです。まずは、支柱(下部)をハンマーで打ち込み、固定が完了したら、支柱(上部)を接続させて完了です。この時、忘れずに支柱(下部)に付いていたキャップを外して、支柱(上部)の頭にしっかりと被せてください。

画像:ガイシ付FRP支柱 FRP250 打ち込みイメージ
画像:支柱キャップ

ちなみに、このキャップ、なぜ最初は支柱(下部)に付いているかというと、ハンマーで打込んだ時に、支柱の頭がつぶれないように保護する役目があります。

もし、支柱キャップが無いまま打ち込んでしまうと、支柱の頭がつぶれてしまい、支柱(上部)を被せることができなくなるので、注意してくださいね。

資材③:鉄心ペグ300

画像:鉄心ペグ300 仕様

最後にペグです。

このペグはプラスチック製ではなく、中心部に鉄芯が入っていて、それが先端にまで出ているので、硬い地面でも簡単に打込むことが可能です。

部材の特徴が分かったところで、さっそく施工の実施です。

「アニマルネット2300」設置前の準備

と、その前に……

柵の設置に重要なことは、どの位置に「アニマルネット2300」を張るのか、きちんと決めておくことです。これは、ネット柵でも金属柵でも同じです。

イノシシやシカなどは、基本的には、地際の対策が重要です。彼らは、地際の隙間を目ざとく見つけて侵入してきますからね。

ということは、柵を張るラインは、極力、凹凸が無い場所を選ぶことが重要です。

例えば、ここにちょっとした窪地があるけど、大回りするのは面倒だから、この窪地を跨(また)いじゃおう、としたら、まずそこの隙間が狙われます。

柵を張る場合は、極力、変化を持たせないで設置することが重要です。

「アニマルネット2300」設置手順

画像:設置手順

それでは、改めて柵の設置手順です。

手順①:支柱の打ち込み

画像:支柱(下部)の打ち込み

まずは、1本目の支柱の打ち込みです。

支柱(下部)を地面に、垂直に打ち込んでください。

重さ1㎏程度の鉄製ハンマーであれば、それほど力を入れることなく、簡単に打込むことができます。

そして、支柱(下部)のキャップを外して、支柱(上部)に取り付けます。

次に、地面に打ち込んだ支柱(下部)に、支柱(上部)をセットすれば完了です。

画像:支柱(上部)の取付

支柱は、約3m間隔で設置します。

手順②:ネットの設置

数本の支柱を打込んだら、ネットの設置です。最初の支柱は、上張ロープが外れないように、しっかりと固定します。

そして、次の支柱に上張ロープを渡して、支柱上部のフックに、ネットの上張ロープをセットします。その際、ロープをフックの上に乗せるだけではなく、フックにロープを1周巻きつけて固定します。

そして、ネットの最上部を一つ下の支柱のフックにセットします。こうすることで、上張ロープとネットの間の隙間を無くすことができます。

画像:ネット設置のポイント
画像:支柱ガイシ部(フック)の構造

これができたら、あとは先へ先へと延ばしていくだけです。

ですが…ここで気を付けたいのは、ネットのマスの形状です。無理に横へ横へと引っ張るように延ばしてしまうと、ネットが横広のヒシ型になってしまいます。

画像:ネット設置の注意点

ネットは30m以上広げることができますが、横に引っ張られてしまう分、ネットの高さが低くなってしまいます。

そうすると、地際に隙間ができてしまったり、隙間はできなくても、地面と接する部分が狭くなってしまい、イノシシやシカが侵入しやすくなってしまいます。

30m分(ネット1巻分)が完了したら、次のネットを設置します。そこで大切なのが、ネットとネットのつなぎ目です。このつなぎ目を雑に処理すると、イノシシやシカに狙われて、侵入されてしまいます。

なので、このつなぎ目はしっかりと、隙間ができないようにします。つなぎ方はいくつかありますが、最もお手軽なのは、余った上張ロープ(と下張ロープ)を使って、重ね合わせたネットを編み込んでいく方法です。少し時間はかかりますが、しっかりと2枚のネットをつなぎ合わせることができます。

画像:ネットのつなぎ目の処置

このほかには、結束バンドを使って固定する方法があります。

ネットの設置が完了したら、次は地際の固定です。先ほどもお話ししましたが、ネットは支柱よりも長いので、通常、ネットを支柱に沿わせて真下に降ろした場合、40~50㎝ほど余るようになっています。この余ったネットは、そのまま地面に這わせるように延ばします。

この余ったネットを地面に張ることで、イノシシやシカの潜り込み防止対策になります。

ココ、重要ポイントですね!

画像:ネット地際の固定①
画像:ネット地際の固定②

手順③:ペグの打ち込み

ネットを地面に這わせたら、ペグで固定していきます。

この作業は、ネットを張る時に最も重要な作業の一つです。ここで地面とネットとの間に隙間ができてしまうと、イノシシやシカに潜り込まれてしまいます。

画像:地面とネットの間に隙間がある

夜間、イノシシやシカは、潜り込める隙間を探して、柵の周りをウロウロします。これは、あえて危険を侵してまで、ジャンプして侵入するよりも、地面から潜り込んだ方が断然に安全だからです。

画像:ネット端部にペグを打ち込む

なので、地際の処理は、柵設置のライン取りと同じくらい重要な作業となります。

ペグは、支柱と支柱の間(3m間隔)に5本ずつ、打込んでいきます。基本は、張り出したネットの端部に、等間隔(約1m)に3本、残りの2本は、ネットが地面と接した場所に打ち込みます。このネットが地面と接した場所は、両サイドに支柱があるので、その支柱と支柱の間に2本打込みます。

画像:設置イメージ(ネット)
画像:設置イメージ(支柱)
画像:設置イメージ(ペグ)

ここでポイントですが、ペグは等間隔に打ち込む必要はなく、凸凹していて隙間ができてしまいそうな場所では、間隔を短くするなど、臨機応変に対応してください。場合によっては、本数を多く打込み、隙間を無くすことが重要です。

また、樹木の枝や幹などをまたいてしまう場合は、結束バンドなどを使って、樹木の幹に下張ロープを一周させるなどして、隙間をつくらない工夫をしてください。コレ、ちょっとしたテクニックです!

画像:樹木の幹に下張ロープを一周させ結束バンドで固定①
画像:樹木の幹に下張ロープを一周させ結束バンドで固定②

まとめ

最後に、地際に隙間がないかどうか、きちんとチェックを行い、作業完了です。

今回は、施工が難しい樹林地内であったことと、参加者全員が初めての経験であったことから、60mのネットを設置するのに2時間ほどかかりましたが、要領を得てしまえば、もっと素早く、丁寧に設置できます。実際には、60mを設置するのに、4名×90分程度でできるのではないかと思います(草刈りを除く)。

このように、簡単に設置できるのも、設置部材が少ない「防獣ネット アニマルネット2300」の特徴ですね。

今回は、「アニマルネット2300」を使ってみようかな?でも、どんな資材なのかわからないな、と思われる方向けにブログを作成しました。

もし、もっと詳しく聞きたい、わからないことがある、という方は、井上までご連絡ください!

池ケ原湿原について

画像:池ケ原湿原のミズバショウ

池ヶ原湿原は、岐阜県の天然記念物に指定された湿原で、奥飛騨数河流葉県立公園内にあります。標高960~980mとなります。

池ケ原湿原の最大の魅力は、なんといってもミズバショウ!

雪解けとともに、約6haの湿原にあるミズバショウ30~40万本が一斉に咲き始めます。

また、同じころには、黄色の花をつけるリュウキンカも咲頃となり、ミズバショウの白とリュウキンカの黄色が織りなす風景は、まさに絶景です。

画像:池ケ原湿原のリュウキンカ
画像:池ケ原湿原の木道

湿原の中央には、木道が整備されており、湿原一帯を楽しむことができます。

また、春だけではなく、秋は湿原の草紅葉やシラカンバの紅葉も美しいようです。夏も、様々な生きものに出会えそうで、一年中楽しめる場所ですね。

画像:池ケ原湿原について
画像:池ケ原湿原散策マップ

【池ケ原湿原の情報はこちらから】
北飛騨の森を歩こう(NPO法人 飛騨市・白川郷自然案内人協会)

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この記事を書いた人

井上 剛

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