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ツキノワグマの出没について~クマの生息数を調べる~

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こんにちは「鳥獣被害対策.com」の小野です。

今回はツキノワグマの出没と生息数の調べ方についてお話いたします。

近年、クマ出没や人身被害のニュースが報じられています。

本州の東北地方や甲信越地方では、現在も高い密度でツキノワグマが生息しており、年によって大量出没が起きています。

近年クマが家のすぐ裏山に出没するようになってしまった農家さんや、人身被害のニュースが流れた地域では、捕獲をしてほしい動物となっています。

近年のツキノワグマの出没は、いったい何が原因で起きているのでしょうか?

ツキノワグマの出没が増えている原因とは?

良く取りざたされる理由としては、以下のものがあります。

  1. ツキノワグマが増えたから?
  2. 猟師が減り、狩猟圧が減ったから?
  3. ツキノワグマが人を怖がらなくなったから?
  4. 生息環境が悪くなってドングリなどのツキノワグマの食べ物が減ったから?

ひとつひとつ、考えていきましょう。

1)ツキノワグマが増えたから?

ツキノワグマが昔と比べて、例えばこの20年で増えたか、減ったか

大量出没の起きている東北、甲信越地方などで、ツキノワグマの出没やニュースを肌身で感じる農家さんや猟師さん達の感触では、増えているのではないか、と感じることが多いと思います。

それらの話を聞く機会の多い、行政関係者、研究者などの関係者でも、同様の感触を持っている方も多いと思います。

しかし、難しいのははっきりした証拠がないことです。

ある地域で目撃情報が増えても、ツキノワグマの生息数が増えた、と単純に結び付けることはできません。

人里に出てくるツキノワグマが増えたのかもしれませんし、奥山から人里へ、生息地がシフトしてきたのかもしれません。

ツキノワグマが増えたかどうかを知る方法として、まず考えられるのは、継続的にツキノワグマの生息数を調べ、年毎に生息数を比べることです。

どうやってツキノワグマの生息数を調べるのか

ツキノワグマの生息する多くの自治体では、生息数調査を行っています。

もともとクマは人を警戒し、人を避けて行動する動物です。

行動する時間に昼、夜の区別はなく、シカやイノシシに比べ生息密度も低い動物です。
生息数を調べるのは簡単ではありません。

目で直接見て探す目視調査や他の哺乳類で行われる糞調査、足跡などの痕跡調査ではなかなか正確な生息数を調べることができません。

捕獲したツキノワグマに目印をつけて放し、再度捕獲される確率で生息数を推定する方法もありますが、調査労力がかかり放獣に理解を得る必要があります。

多くの自治体では、目視調査や猟師さんへのアンケートなどから、生息数を推定してきました。

しかし、それほど正確でない数値のため、ツキノワグマが増えたのか、減ったのかを考えることは少し無理があります。

また、調査人数や面積にも、年によってばらつきがあると、比較がさらに難しくなります。

そのため、ツキノワグマの増減についてはほとんどの地域で、はっきりした証拠が得られていないのが現状です。

新しい調査手法

近年、様々な手法によりより正確な生息数の推定が試みられています。

10年ほど前から全国の自治体で導入され始めた方法として、DNAヘアトラップ法があります。

クマの好きな果実やハチミツなどの餌を置き、その周囲に有刺鉄線での囲いをつくり、クマの毛を採取します。

これらの装置をヘアトラップといい、この手法をDNAヘアトラップ法といいます。

採取した毛を分析し、DNAを調べることで個体識別をします。

この方法を用いると、ヘアトラップの周辺に生息し、トラップに来たクマの生息数を知ることができます。

同様に個体識別をする方法として、ここ数年で試されている、カメラトラップ法があります。

カメラトラップ法は、ヘアトラップ法と同様にハチミツ等の餌でクマを呼び寄せ、(ただし、餌付けにならないよう、餌は食べられないようにしておく必要があります)ツキノワグマの胸の月の輪模様を撮影し、個体識別をする方法です。

ヘアトラップ法に比べ、DNA分析の予算が掛からず、低予算で行うことが可能です。

これらの手法による調査を行うには、適切な調査デザインが必要であり、また特定の地域のみで行った調査結果を、どのように広域の地域に当てはめるのか、よく検討する必要があります。

また、狩猟報告捕獲再捕獲の手法を用い、毎年同じ手法を積み重ねることで増減を調べている県もあります。

正確な数値を追うよりも、毎年の増減について情報を得る方法であり、情報を集める体制づくりや
普及啓発が必要であるものの、コストもかかりにくく、簡素で良い方法です。

以上のように、クマの生息数の推定はまだ手法開発の段階であり、クマが増えているかどうかは、全国的にはまだはっきりと分からない状態です。

そのため、近年のクマの出没の原因として、証拠をもとに示すことはできていません。

次回は、

  • ②猟師が減り、狩猟圧が減ったから?
  • ③クマが人を怖がらなくなったから?
  • ④生息環境が悪くなってドングリなどのクマの食べ物が減ったから?

について少し検証してみようと思います。

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弊社では、全国各地で被害対策や捕獲の講習会とともに、ニホンジカ、サル、ツキノワグマの生息数推定業務を行っています。

自治体の担当者様で、既存の調査方法の改善や、相談等ございましたら、お気軽にご連絡をいただければと思います。

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この記事を書いた人

小野 晋

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