【イノシシ解体】ジビエ自家消費用としての解体処理方法を解説
投稿日 : 2020年10月13日
更新日 : 2024年02月09日
「鳥獣被害対策ドットコム」の宮畑です。
今日の鳥獣害対策の知恵袋は、止め刺し後のイノシシの解体のお話です。
※【閲覧注意】記事内に一部残酷な画像が含まれますので、狩猟等の関係者や狩猟に理解のある方、ジビエなど野生鳥獣の利活用に興味のある方のみお読みください。
イノシシなど捕獲した獲物を美味しくいただくためには、補てい具(保定具)を活用して安全を確保した上での止め刺し、その後の適切な解体、処理が必要です。
止め刺し後は速やかに頸動脈をナイフ等で刺し、放血することが重要です。この血抜き処理をしっかりやらないと臭みが強い肉になってしまいます。
また、食材として販売したり飲食店等に提供したりするためには、許可を受けた食肉処理加工施設で衛生基準に則った解体、処理手順により加工した肉である必要があります。
今回ご紹介するイノシシの解体、処理方法は、あくまで自家消費を前提とした解体、処理についてのお話ですので、その点ご理解の上お読みいただければと思います。
ジビエは臭くてまずいもの?
残念ながら、ジビエを扱うお店やレストランでも、獣臭くてとても食べられないような肉に出会うことがたまにあります。
これは、
・血抜きから解体処理までの工程がうまくいっていない肉
・大型の個体、特に繁殖期に近い雄など、肉自体に特有の獣臭がついている肉
が使われている場合が多いからだと考えられます。
はじめてジビエを食べる人が、最初にこのような臭い肉にあたってしまうことにより、「ジビエは臭いもの、まずいもの」というレッテルが貼られてしまうといった話は、案外多いように感じます。
このように、ジビエに対して「臭い、まずい」といったマイナスなイメージが付いてしまわないようにするためには、やはり適切な血抜きから解体処理を行うことが重要です。
血抜きと運搬する際の注意点
まずは血抜きですが、首の付け根の下側の頸動脈をナイフ(※)で刺します。
※ナイフで止め刺しするような場合は、獲物に接近しなければならないため、大きな危険が伴います。安全、迅速に止め刺しするためにも、補てい具を活用し、捕獲した獲物の動きを確実に制限することを推奨します。
このとき、刺し傷はなるべく小さい範囲にとどめるようにします。刺し傷は小さい方が雑菌による肉の汚染も抑えられ、傷周辺の肉の損傷も小さく抑えられます。
血抜きができたら、次は車まで運びます。
車までの距離が近い場合で、捕れた獲物が30kg程度までなら担いで運ぶこともできますが、距離が遠い、獲物の重量が重い場合は、ソリや角形プラ舟に積んで引きずって運ぶと便利です。
足などをつかんでそのまま引きずって長距離を運ぶと、石などにぶつかった部分が内出血等を起こし損傷して、肉の質が落ちてしまい、可食箇所が少なくなってしまいますので注意が必要です。
なお、そのまま担いで運ぶときは業務用の大型のビニール袋等でくるんで運ぶことをお勧めします。
なぜビニール袋にくるむのかというと、獲物の血が付着して衣服が汚れることもそうですが、何よりマダニ類が相当量寄生していることが多いため、体にマダニが付着して刺されるリスクが高まるからです。
マダニ類は感染症の原因となるウイルスやリケッチア、細菌等を保有している個体がいるため、これらのウイルスを保有しているマダニに刺されることで感染する恐れがあります。
捕獲したイノシシを角形プラ舟ごと車に積んで谷川等まで運んだら、川の中で体表についた血や泥などをブラシなどでよく洗い流します。
イノシシの内臓の摘出手順
次に肛門近くから首付近まで内臓を傷つけないようにナイフで切り開きます。
内臓を摘出する際は、できれば、切断した食道、肛門の端をビニール袋で包んで結束バンドや紐で縛ってから作業します。こうすることで内臓の内容物や糞などによる肉の汚染が防止できます。
また、内臓を摘出する際にも膀胱や内臓を破らないように注意します。イノシシの尿はかなり匂いがきつく、尿が付着してしまった部位は結構な量を切り落として廃棄せざるを得なくなります。
内蔵を取り出したら、肝臓、心臓、腸などの食べられる部位は取り分けておきます。腸は切り開き、糞などをきれいに洗い流しておきます。
なお、胆のうは肝臓に癒着していることが多いため、破らないように注意して切り除きます。
内臓を取り出した後の体は、腹腔内等の汚れや血を洗い流します。
鮮度を保って搬送する
イノシシの体をきれいに洗い終わったら、取り分けた内臓とともに角形プラ舟ごと車に積んで自宅まで搬送します。
運ぶ際は、イノシシの体を谷川に漬けて時間をかけて冷やしたり、氷などで冷やしたりして、できる限り鮮度が落ちないように配慮して運びます。
このときは、関東地方でも記録的な大雪が降った後のため周辺では雪がかなり残っていたので、雪で冷やしつつ運びました。
イノシシの皮剥からトリミング、脱骨まで
自宅等に持ち帰ったら、頭を下にして解体用ハンガー等で吊るし、皮をはぎます(皮剥)。ハンガーにかけるときは足首の腱と骨の間にナイフで切れ目を入れて腱に引っ掛けます。
皮をはぐときは食品取扱可のポリエチレン手袋等を着用し、ナイフも消毒用アルコールで殺菌します。手袋が汚れたりしたらこまめに交換し、ナイフも解体の工程ごとに消毒するとより衛生的です。
後ろ足から頭の方に向かってナイフで少しずつ皮を剥いでいきます。この時、剥いだ皮の表面側の獣毛が肉に触れないように注意します。
頭の付け根付近まで皮を剥いだら頭骨と頸椎の間か頸椎と頸椎の間の軟骨部分をナイフかのこぎりで切り離します。落とした頭の頬肉等や舌も美味しいので切り取っておきます。
この段階で、現地で切開した腹部の切り口や汚れ、損傷のある部分をトリミングします。
この後、いくつかに分割しながらまな板上で脱骨し、細切りしていきます。
まな板や細切りに使う包丁等も適宜アルコール消毒をします。
また、別途取り分けておいた肝臓や心臓は、いくつかに分割し流水中でよく血を絞り出すように水洗いします。
よりおいしい猪肉にするためのポイント
脱骨したあとのブロック肉を厚手のキッチンペーパー等で包んでビニール袋に入れ、毎日ペーパーを交換しながら2~3日間冷蔵庫で保存すると熟成が進み、抜き切れていない血や余分な体液等も除去できるので、よりおいしい肉になります。
その際、薄い紙ベースのキッチンペーパーを使うと筋膜や切り口に張り付いて非常に取りづらくなるため、厚手の素材のリードキッチンペーパーを使うと張り付きにくく、張り付いてもはがしやすく便利です。
細切りした肉はラップできっちり包み部位ごとに分けて保冷袋に入れ、冷蔵や冷凍保存しておきます。
まとめ
最後に、今回は狩猟によって捕獲したイノシシなど野生動物の命を無駄なくおいしくいただくためには、補てい具を活用して安全を確保した上での止め刺しから迅速な血抜き、適切な解体処理が必要だということをお話させていただきました。
世間一般では有害鳥獣とされる動物を、単に捕獲処分するだけではなく、ジビエとして利活用することで、より豊かな狩猟生活、自然と食文化の調和が図れるようになるのだと考えます。
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