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アライグマの駆除と動物福祉

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こんにちは、「鳥獣被害対策.com」の園田です。

今回はアライグマの防除に係わるお話です。

主なテーマは2つ。

ひとつは、混獲に関する問題。

もう一つは、アニマルウェルフェアに関する問題です。

ちなみに“アニマルウェルフェア”という言葉を聞いたことが無い方もいると思いますが、農林水産省によると“快適性に配慮した家畜の飼養管理”と定義されています。

アライグマは、ネコ目アライグマ科アライグマ属に分類される中型の哺乳類です。

原産は北アメリカで、日本にはペットとして持ち込まれ、それが遺棄されて、分布を拡大しています。

日本では、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(以下、「外来生物法」とします)が2005年(平成17年)に施行されましたが、その中でアライグマは、

  • 生態系
  • 人の生命・身体
  • 農林水産業

に被害を及ぼすおそれのある特定外来生物に指定され、規制・防除の対象となっています。

加えて、昨年27年3月に公表された「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生態系被害防止外来種リスト)」では、“アライグマ”は総合対策外来種のうち、緊急対策外来種に指定され、「積極的な防除が急がれる」とされています。

鳥獣被害対策.comを運営する(株)地域環境計画では、動植物や生態系などに関するコンサルティングも行っており、今回、アライグマの防除に関して、東京農業大学の山崎晃司教授から様々な最新の知見についてお話をお伺いすることができたので、ご紹介します。

捕獲における混獲の問題

アライグマの捕獲には、主に箱わなが用いられます。

しかし、この箱わなには、ノネコや在来のタヌキなどの、防除対象としていない哺乳類が捕獲されることがあります。

いわゆる、混獲(錯誤捕獲)です。

ネコが捕獲されると、それが飼い猫だった場合には飼い主から苦情が来てしまいます。

また、捕獲された個体が、在来のタヌキであった場合は、捕獲した個体への影響に加え、授乳中のメスであった場合には、子供へ授乳ができなくなるなど、子供にも影響が波及するとのお話しでした。

なお、これはアニマルライツ(動物の権利)の上でも問題があるといいます。

アニマルウェルフェアの問題

箱わなにかかった動物は、脱走しようとなんとか箱わなを壊そうとします。

アライグマは、網目に手を突っ込むことで、腕の皮がむけてしまい、痛々しい様相になってしまうことも多いようです。

そのほかにも、ハクビシンは頭や体を使って罠にアタックをかけるので、額などの皮がむけて、血がにじんでいます。

そのような背景から、山崎先生は在来種の混獲防止用にアライグマ専用わなを考案されました。

この箱わなは、アライグマの手先が器用であることを利用して、釣り餌をセットした穴の部分に手を突っ込むことで、扉が閉まる仕掛けになっています。

また、アライグマが網目に手を突っ込めないように、網目が25mm×25mmになっています。

捕獲個体が暴れないように、わなにカバーをかけるなどの配慮も必要とのことです。

捕獲された個体の殺処分ついては、アニマルウェルフェアを考慮して、安楽死を行わなければならないように、都道府県の防除計画で示されています。

アライグマの殺処分に用いられる方法は、炭酸ガスが主流ですが、炭酸ガスを注入しても、幼獣はなかなか効き目がでないとのお話もありました。

また、アライグマの駆除に従事する方についても、専門家でない場合もあり、従事者のメンタルヘルスの問題もあるとのことでした。

現在、アライグマをはじめとする外来種や猪やシカといった有害鳥獣など、農業被害や生活環境被害から多くの野生動物が駆除されています。

駆除のための器具や捕獲方法といったハード面に目が向けられがちですが、野生動物のアニマルウェルフェアや捕獲従事者のメンタルヘルスなどのソフト面はこれからの課題ではないでしょうか。

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